甘熟甘懐。

続・ホワイトデー2012~一日後

おはようございます。
出だしが前回と一緒ですね。

昨日はあれから宿へと帰り、会話らしい会話もないまま当然の如くなだれ込んだわけですが、最中に引っ掛かった台詞があったので一夜明けた今日早速聞いてみたいと思います。

「蹴り出されてねえとか奇跡じゃね…?」

起きてみたらなんと、ベッドの上にいた。しかもちゃんと、隣にレモンがいた。
俯せになってシーツに顔擦りつけながら、くーくー幸せそうに眠っていらっさる。かわいーな、おい!

「おはよー。レモン?」

俺らの宿は相方として組み始めた時からずっと、当然のようにツインだった。
そらぁそうだ。
最初はまさかこんな仲になれると思ってなかったし、こうなった後でもダブルにすっかーなんてそんな面倒な話は決して出ない。おばちゃんに交際宣言してるようなもんだしな。
だからエッチん時はもちろん、どちらかの寝床で…と言うことになるわけなんだが、俺的に何となく、レモンのベッドには縺れ込み辛い。
だって聖域じゃん、あそこってば! キラキラ輝いてんだよ俺ン中では! そう簡単に体液で汚せねえの!
毎度それとなくこっち側に誘導してる。
結構余裕あるよね俺って。ええ嫌われないように必死ですとも。

だがレモンの方はと言えば、そんな俺の意地らしい気遣いには全く気付かず、一戦交えたあとでも滅多に同じベッドで眠ってくれようとはしなかった。
二人して後始末する間もなく、気絶するみたいに寝入ってしまえば明朝に毛布から蹴り出され、平和に朝を迎えられたなとむっくり起きれば、愛しのカレシはちゃっかり綺麗な自分のベッドに転がって寝ていたりする。
目覚めたら腕の中…だなんてそんなときめく展開にはなりえなかった。
それはそれで別にいっかって諦めてたんだけどさ。けどさ!

今日の、これは。これはもしや…。

「昨日のヤキモチ効果か…?」

いつもの如く俺主導で始まった恋人同士のイトナミだったが、今回のレモンはやたら大人しかった。
静かに俺を観察してるみたいにじっとこっちを見据えてきて、キスもされるがまま。
まぐろ状態と言っても過言ではないそれに、不安になって「どした?」と尋ねたらたった一言。

『アイツに仕込まれたのか。』

聞いた瞬間は何をおっしゃっておられるのか全くもって理解できず、じわじわと意味が浸透してくる頃には驚きすぎて目ン玉がこぼれ落ちそうになった。
まさかまさかな、聞き間違えだよな。と見つめたまま次の反応を待っていたら、拗ねた表情がふんとそっぽを向いてくれた。

えー!! なーんーなーのーこーれーはあああ!!

その後はもー可愛くて可愛くて!
たまんなくて終始でれでれしてたわ俺。
そんなしまりのない顔してたって、全く突っ込まれなくて、いやまぁ最後は突っ込んでもらって幸せ満開でしたけどそうじゃなくって!
いやぁその後はいつになく激しかっ…まぁまぁそれは置いといて!

「レモンさーん。起きねえのー…?」

朝日がカーテンの隙間から注ぎ込まれて、シーツに広がる金の髪をキラキラと浮かび上がらせる。
うっすら残る戦闘時の傷痕がいかにも殴りらしい背中で。
けれどそれすらも美しく、そっと撫でればすべすべとした肌を楽しむことができる。
え? 昨夜の爪痕なんかはないのかって?
いやいやいや滅相もない! こんなぱーぺきな素晴らしいお背中に爪なんか立てられるとお思い!?
こ の 俺 が!!
毎回血が出るくらい深爪ですよ。女子でもあるまいに軽く鑢までかけていますよ。
それもこれもこの麗しの後ろ姿を守るため!! 夢中になってうっかり引っ掻いても大惨事にならねえよう、常に細心の注意を払っていますよ俺は! 彼氏の鑑じゃございませんこと!?

「ん……ぁ?」

はあレモンさん、あぁたってばほんと、頭のてっぺんから足の先っぽまで罪な男…。
寝起きもイケメンとか俺をどうしたいの狂わせたいの元からあぁたに関してはネジ一本飛んでますわよちくそう!!

「レモンたーん。」
「…あに。」

一日のうち、一番素直なのが実は起きたてだったりする。
だから本音を聞くなら今が一番の狙い目。普段もごまかしたり嘘をついたりしない子だけれど、ストレートになってくれる分とてもわかりやすい。
ただし、寝起きは悪くない方なので、早くしないとすべて質問し終える前に覚醒してしまうのが難点だ。

聞きたいことは、コンパクトに。
のっそり上半身を起こしたところに早速投げかけてみた。

「昨日昼飯、何食った?」
「…忘れた。……オム、ライス。」

忘れてねえじゃん。
ケチャップでお得意のポリン描いたろ。絵心が微塵も感じられないやつ。
あの辺りでオムライスって言えば…、よく行くって言ってた食堂かね。
女なプリーストたちにはあまり受けそうにない店だ。
したら男の同僚だけだったんかな?
細められた目が窓を一瞥する。

「なんで探しにきてくれたん?」
「……行けって、言うから。」

なんだよ自分の意思で来たんじゃねえのかよ。同僚の入れ知恵かよ。
おもしろくねーな。
眩しかったのか、眉間に皺を寄せてすぐにそこから顔を逸らした。
シーツを睨みつけながら、ぼりぼり後ろ頭を掻いている。

「なんで俺があそこにいるってわかった?」
「…パーティー、組んでたろ。」

眠そうにこしこし目元をこするその仕草が、やたら子供っぽくて可愛くてニヤニヤする。
普段とのギャップが激しく萌え、です。
パーティー、俺とおまえの二人だもんな。
他は誰もいない。二人っきりのパーティーだもんな。

「何号室かわかんなかったろ?」
「…あっこだけ、物音がした。」

地図上のマーカーである程度の場所はわかるが、室内か室外でしか判断はつかない。
アイツの家は六階建てだったから、正確な位置がわからなきゃ片っぱしから覗いてみるしかない。
まーあぁいう住宅地は冒険者ばっか住んでんだろうし、昼間はみんな出払ってるか。

「けっこう汗かいてたな?」
「……別に。そんな、走ってねえ。」

全室中の様子を窺ったわけか。六階まで全部見てくれたん?
走って、走って、一番奥の部屋だったからな。大変だったよな。

ふふ。ちょっと目ェ覚めてきた?
言いたくない部分だったらしい。ぷいとそっぽ向かれてしまった。
ほんとかわい…。

「ドアぐちゃぐちゃだったじゃん。」
「…ムカついたから。」

くそプリとか言われたもんな。あの辺から聞いてたの?
まず物か俺かに当たるものね、あぁたは。あっこでだいぶ発散したんだな?
…あれ弁償しなきゃだよなぁ…。
玄関扉っていくらすんだろう?

「なんでそんなムカついた?」
「……飯食う、約束。」
「え?」

ぼんやりと定まらなかった焦点が俺に固定される。眠いのか機嫌が悪いのかわからないけれど、半目で睨みつけてくる。
あれ? なんか俺の理解とちっとズレてる?
俺がほいほいついてったから、とか。そっちじゃなくて…?

「しかもチャットぶっちしたろ。ラムネのくせに生やってんじゃねえよ。」
「え、や、だってあれは、おまえが別で食うとか言うから!」
「その上セフレと優雅にランチな。喧嘩売ってんだろおまえ。」

あぁああぁぁ……そっから聞いてたんかよ…。どんだけ扉の前にいたよおまえ…。
これは想像以上だ。俺が予想した範囲を軽く上回っている。
髪を掻きあげ、顎を少し上げる。
冷たい目で睨まれる。
覚醒……したな。
ぽやぽやしていた口調が、しっかりしてくる。

「や、あ、だからそれは! その、悪かったって…。今は、ただの友達…だから。」

冷や汗が背中を伝う。
自らほじくり返しておいて、レモンの反応が怖い。怖い…。
昨日から俺、馬鹿ばっかりやってる…。
そもそもなんか変なんだよ。ズレてんの、レモンと俺。
温度差…みたいなものが、あるっぽい。
それに薄々気づいていたのに、わかんねーからって笑ってそれに蓋をして…そしてその蓋をまたいたずらに、開こうとしている。
普段俺ばっかあたふたして、俺ばっか余裕がなくて、俺ばっかヤキモチ妬いてっから…。
いい機会だから、イレギュラーな今を楽しもうって。
軽い気持ちだったんだ。たまにはいいんじゃね? とか、その程度でしか考えていなかった。
でもそれでは、済まされないっぽい雰囲気に、なってきた…?

「…ごめん、レモン。謝ってもどうにもなんねえのはわかってる。……なぁ、俺、どうしたらいい?」

正直なとこを言うと、まだたぶんちゃんとわかってねえ。
ただ、冷静になって考えてみれば、今は何もないとは言え、昔は体の関係があった男だ。
飯食うだけっつったって、二人っきりの密室に篭れば、何かあるかもしれない…そう考えるのが普通だ。
こっちにそのつもりがなくても、向こうにあればどうにでもされてしまう。
逆の立場でレモンが昔の女の家に…なんて恐ろしくて想像もしたくない。
そんなことされたら俺、確実に発狂する。

ヤキモチかどうか、確かめてやろうと思った。
でもそんな失礼なこと、考えてる場合じゃなかった。
笑って済まされることじゃない。一晩寝て起きたからって、水に流してもらえるもんじゃない。
例え、未遂だったとしても。

「…アレは?」
「アレ?」

鼻の上に皺を作ってこちらを睨んでいたレモンが、視線をはずしてから小さな声で問うてきた。
咄嗟にはわからなくて思わず聞き返す。
許してもらえるのなら、この状況が好転してくれるのなら、なんだってやる。
他力本願この上ないが、もう頭ン中くちゃくちゃで、訳わかんねー…。
アレってなんだ。
また俺、何か大事なものに気付けていないのか?

「三つくらい、あったろ。」
「…あぁ。レアか? いや、まだ売れてねえ。」

二人してちょいと財布がピンチんなって、倉庫ひっくり返して捻出した金目のもの。
昨日ホワイトデーついでに出してたが、一つも捌けてはいなかった。
それがでも、なんだって?

「じゃあ売れるまで露店してろ。」
「えっ……。あ、レモンはっ?」

まさか…俺が仕事してる間に……。
腹の中が急激に冷めていった。ぎしぎしとこめかみの辺りを締め付けられる。
こんな気分だったって言うのか?
レモンが?
いつもあの、過剰なくらい俺様で自信に満ちてる、レモンが?
こんな不安で居ても立っても居られない気持ちに、なったって言うのか?

しかしレモンがその間どうしようと、俺に止める権利はない…。
それだけのことをしたしな…。
やっべ自分のこと棚に上げて泣きそ…。
萎縮してしまった心臓を上から押さえつける。
胸が、胸が痛え…。

「愚問だな。」
「う、ん…。そ、だよな。」

ずずっと鼻を啜ったら、吃驚した顔がこっち向いた。
優しく苦笑されて、ピンと額をはじかれる。
うえっ、な、なに!?
俯かせていた顔を、咄嗟に持ち上げる。

「ブサイクな顔してんじゃねえよ。…てめえは、黙って枕になってりゃいいの。」

立ち上がったレモンが戸口へと向かう。
半裸の体に翻した法衣を羽織ってこちらを振り返った。
見上げたそこには、俺を見限ろうなんて、黒い感情は微塵も浮かんでいない。
ただ、綺麗に笑ってた。

うう、皆なんで、ここばっか狙うんだよ…。
…でこ、痛ってえんだよ……。


『くそショウルきたら起こせ。』

シートに商品を並べ終えるなり、レモンはそう言って再度寝はじめた。宣言通り俺を枕にしながら。
つうか背中合わせで体重全部預けてくれちゃって、枕じゃなくてこれベッドじゃねえ?

ていうかあのナイト男、そういやそんな名前でしたね…。やっとすっきり思い出したわ!
…でもなんでレモンが知ってんのかしら。この方ほんとたまに謎いわ。
昨日の今日でまさか来ねえだろうに、よっぽど腹立ったのかなぁ。

「過保護だな。」
「ぎゃーほんとにきたー!!」

酷いデジャビュに軽くテンパったら、いようとお手軽に手を上げたショウルが目の前にしゃがみこんだ。
やだなにこれ昨日とほぼ一緒じゃない!
買いもしないのに、目の前のおしゃぶりを手に取る。
パンクから巻き上げたんだよ。売れねーだろーけど嵩増しにな。

「あっ、そだ。レモンれもーん!」

うっかり忘れかけた。
そうです今日は背後にレモンがいて、俺はこのタイミングで相方様を起こすという役目を果たさねばならんのだ。
コイツの体重、体になじみすぎてて一瞬存在を忘れてた。
ズリ落ちないように気をつけながら後ろを振り返る。
ほっぺ突いたら嫌がって払われた。なんだよ自分から命令しといて可愛いな!

「寝かしといてやれよ。」
「おまえ来たら起こせって言われたもん。」

んーとか唸ってるけど起きない。
こんだけ突けばいいかなぁ? 俺ちゃんと起こしたもん! って言い訳できるかなぁ。
んなの通用しねえと思うけど…。
キレられるのも幸せ。とか言ったら、マゾが! って言われちゃいます?
…自覚はあるんだ。
頭に“ド”はついてないはずだから許せ。

「明け方耳打ちでバトったから眠いんだろ。ややこしいし寝かせとけ。」
「へ?」

え、は? えええ!?
バトったってナニを? え、ナイト男…じゃなかったショウルとレモンが!?
うそだろなんでっ?
構っていた相方を放り出して、勢いよく振り返った。
したら、ちょうど頬杖をついたショウルが半目で溜息を吐くところだった。

「いきなりで相当ビビった。」
「え、うそ、相方から…? だから名前知ってたんか…。」
「は? おまえが教えたんじゃねえのかよ。」

いいやそんな覚え微塵もないぞ! 別に何も悪いことしてねえのにあの当時は何となくセフレのことは隠してたし、今となっては直前まで名前忘れてたんだよ。俺に教えられるはずがねえ…。

えええなんで!? れもーんレモン! おまえそれどこ情報だよおおぉ!
青くなって汗かきながら生唾飲み込んだら、ショウルがフッと小さく息を漏らした。
溜息かと思いきや、苦笑だったらしい。
口角をあげたそのままで顔を覗き込んでくる。

「何…だよ。」

うりうり頭まで撫でられた。
えー…今度はなんですか。

「おまえは男相手に警戒心がねえな。」
「…必要ねえし別に。」

んなもん張り巡らしたって無駄だろう?
友達全員を疑ってかかるのは疲れる。おまえみたいな物好き極少数だろうしさぁ。
なんかそのことで昨日からアレやコレや経験はしたんだけど、一体自分の何が悪かったのかはよくわかってない。
俺は何かを間違えていたのか?
俺は何かとてつもないことをやらかしたんだろうか?

「つい昨日襲われかけた口がよく言う。もうちっと愛されてる自覚を持ておまえは。」
「う、だって…。」

まさかこんな、大事? …になると思ってなかったんだもんよ。
未だに半信半疑だし、夢かと思ってる自分もいる。
確かにレモンのぬくもりが俺を守ってくれてるみたいに後ろにいて、しょうがねえなって感じでショウルもこっちを見ているんだけど…。
なかなか実感が湧いてくれない。ありえない気さえして全然しっくりこない。

「後ろの相方さん、耳打ちで開口一番俺に何言ったと思う?」
「…えー……わかんね。想像つかねえ…。」

俯いたまま難しい顔をした俺を見て、思うところがあったのかもしれない。
笑いを含んだ声で、ショウルが静かに話し始めた。

「“弁償してやるから取りに来い。”は? 今から? と思ったら“起きたら露店させっからそん時。”だってさ。」
「ぶっは。」

じゃあコイツをここへ呼び出したのはレモンだっつうのかよ!
しかもあぁた払える金ねえじゃん俺ら仲良くピンチなんだからさー!!
どうすんのレアでも売れなきゃ、んな大金どこで……って。

「あぁそうか。だからこれ…。」

実は本当についさっき、見計らったように一つ売れたんだった。
ほんとに昨日は微塵も売れる気配がなかったのに、コイツがくる数分前に、タイミングよく…。
じゃあレモンは、修理代としてこれをあてにしてたんだな。

「ん、じゃあ……これで。ごめんな。今朝寒かったんじゃねえ?」

開いた掌の上にちりちり硬貨を落とす。
思いついたかのように謝罪すれば、瞠目していた表情がニヤりと勝ち気な笑みに切り替わった。
ぐっと右手を取られて握り込まれる。
吃驚して咄嗟に口走ってしまった。

「ッ…ショーちゃ…!」
「懐かしいな、その呼び方。昨日は呼んでくんなかったじゃん。」

あははははー。痛いとこつくねえ!
こらぁ忘れてたなんて口が裂けても言えねえ。墓場まで持って行こー…。
いやまぁ、小言をぶつぶつ言われて、ピシッと一発デコピン入れられて終わりだと思うけど。
世の中には言わなくてもいいことってあるよな、うん。

「…ぁ。」

細目られた目が物語ってる。
好きだよって…訴えてくる。
昨日はちっとも感じ取れなかったのに。なぜだか今ははっきりとわかってやれる。

でも、ごめん。
いくら慣れた気配でも、いくら安心する掌でも、俺はこの手を取るわけにはいかねえんだ。
腕を捻って抵抗する。

「離、せ。」
「俺、諦めねえから。」

え?

「言ったろ。おまえ隙だらけなんだよ。次はぜってー犯す。」
「どぅえぇ!? おかっ…犯すっておまえ…!!」

強い意志の宿る瞳が冗談では流してやらないと言っている。
逃がさないともおっさっていらっさる…。
いやいやいやいや!! んなの俺どう返しゃいいの!?
俺レモン一筋だから! とか言やいいの? それめっちゃ逆効果くさくねえ…?

全く、おまえら…どうしてそう…。

「…あぁもう…物好きだなぁ…。」
「そうだな。この一点に関してだけ言えば、レモンとは気が合いそうだ。」

ニッと笑って、「また来る。」そう言ってショウルは立ち上がった。
でも手は離してもらえなかったから、自然と一緒に持ち上げられる。
どうしていいかわかんなくてとりあえず睨んだら、フッと優しく微笑んでから少し屈んだ。
手元がナイト型の陰で暗くなる。

「ッ!」
「ごちそーさん。」

手の甲に濡れた感触。
慌てて引っ込めたら、大きな背中がぷらぷらと手を振り歩きだした。
ななななっ!
なんつう気障なことサラッとしてくれてんだあああいつは!!

茫然と見送る。
その背は何かが吹っ切れたようで、機嫌が良さそうにも見えた。

「ショーちゃん…。」

ぽかんと口を開けていつまでも眺めていたら、身じろいだレモンが背中からズレ落ちた。
慌てて体勢を変えてやったら、収まりがよくなかったのかまた寝息が再開される。

さて、ちなみにそのレモンさんだが、日暮れ前にようやくお目覚め遊ばした。
途端にぶわっと汗をかきだした俺と、定位置から姿を消したブラッドアックス。
それらですべてを察したんだろう…。

お得意の回し蹴りで壁に縫い付けられるまで、あと、三十……秒ほど?

ハハハ、オワタ。



―終―


あとがき。

ここまでのお付き合い、ありがとうございます。
反応が様々いただけたので「レモネード」の続編です。
楽しんでいただけましたでしょうか。

ホワイトデー2012」の続きになります。読みにくくてすみません…。本当はここまで含めるつもりだったのですが、間に合わなかったのです。
レモンかっこいいとか、ラムネひでえとか、ナイト男可哀想とか、いろいろご意見いただきました。ありがとうございます!
このまま終わらせるなよと温かい言葉もいただきまして、名前考えました。これからも二人の邪魔をしてもらおうかと思います。スピンオフも何となく浮かんじゃったからもうこうするしかないよね!
こんなリサイクル、アリですか? 楽しみにしていただけたらすごく嬉しいですー。

 
高菱まひる
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